三菱自動車には知恵と情報がまだ眠っている

東京大学名誉教授 武田晴人

たけだ・はるひと●1949年生まれ。2015年東大教授退官。専攻は日本経済史。著書に『高度成長期の日本経済』『新版 日本経済の事件簿』など。(撮影:ヒダキトモコ)

今回、三菱自動車で起こった経営危機がすぐに三菱グループの弱体化につながるとは見ていない。

三菱のような企業集団には、資金調達や情報共有などで強みがある。特に三菱グループはあらゆる企業を取りそろえた、いわゆる「ワンセット主義」を最も完全な形で残した財閥系の集団だ。たとえば住友グループは、鉄は持っていたが自動車は持っていない。今は鉄も手放しかけている状態だ。三井グループは商社と銀行が儲かっているが、機械部門には進出し損ねた。傘下の東芝に対する影響力も強くない。

その点三菱には、機械部門に三菱重工業があり、電機部門に三菱電機がある。ほかにも石油化学など多くの素材部門があり、銀行や海運、さらに海上保険がある。そして、これらはすべて競争力のある企業として現存している。

三菱が他の企業集団よりも強いといわれるのは、このグループの総合力に起因する。今回の件でこの力が簡単に弱まるということはないだろう。

新産業の育成に課題

プラスの視点 アクセスランキング バックナンバー一覧 TOP