クーデター失敗の後、支持者の前で演説するエルドアン大統領。失敗した最大の要因は、大統領を拘束・殺害できなかったことだ(EPA=時事)

本連載の本来の目的である会社や役所での処世術や、仕事で役に立つ教養について論ずることに早く戻りたいのであるが、次々と国際的な事件が起きるので、それについて言及せざるをえない。今回は、7月15日に発生したトルコのクーデター未遂事件に言及せざるをえない。この事件についての正確な知識を持っていることが、多くのビジネスパーソンに有益と筆者が考えるからだ。事件の概要については、次のとおりだ。

〈軍の一部による反乱を鎮圧したトルコのエルドアン政権は16日、クーデター計画に関与したなどとして解任した判事や検事ら司法関係者2745人の逮捕を命じた。またエルドアン大統領は、司法界などに大きな影響力を持つとされる米在住のトルコ人イスラム指導者、フェトフッラー・ギュレン師が反乱の黒幕だとして米国に同師の本国送還を要求。エルドアン氏は、政権転覆の危機を乗り切ったこの機会に、政敵の徹底排除に乗り出した。/エルドアン氏は16日夜、イスタンブールでの演説で、「軍はわれわれの側にあり、私はその最高司令官だ」と、自身の権力に揺らぎはないことを強調した。/15日夜に発生した反乱では、反乱部隊と正規軍との戦闘などにより、市民ら161人に加え、反乱に参加した兵士ら104人の計少なくとも265人が死亡。治安当局は16日から17日にかけ、陸軍司令官ら多数の将官を含む軍関係者約3千人を拘束した。/ユルドゥルム首相ら一部の閣僚は16日、欧州連合(EU)加盟の条件を満たすために2002年に廃止された死刑制度を反乱首謀者らの処罰のために復活させることもあり得るとの考えを示した。〉(7月17日「産経ニュース」)

今回の事件は、トルコ軍の一部の反乱と呼ぶには規模が大きすぎる。首都のアンカラと最大都市のイスタンブールで内戦が展開されたということは、軍の中枢を含め、今回のクーデターに関与していた中堅幹部がいるということだ。クーデター派は、エルドアン大統領がトルコ南西部のマルマリスで静養中のタイミングを狙って決起した。当初、トルコ国営テレビはクーデター派が権力を掌握したという声明を流した。

今回、決起した軍人は、クーデターの際にはまず放送局を占拠するという定石を踏まえている。エルドアン大統領は、権威主義的な支配体制を強めていた。このような状況下、憲兵、警察と国家情報機関(MIT)を用いて反体制派の動向を詳細に調査している。それにもかかわらず、今回のクーデターの動きを事前に察知できなかったことは深刻な事態だ。軍、警察のみならずMITにもクーデターの同調者がいたということであろう。

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