宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
みやけ・くにひこ●1953年生まれ。東京大法学部卒、外務省入省。在イラク大使館公使などを歴任。著書に『日本人が知らない国際情勢の真実』など多数(撮影:梅谷秀司)

戦乱がやまず、つねに不安定な中東地域。なぜ中東は安定しないのか。それを歴史的側面から探ってみたい。

最近の事件から取り上げてみよう。今年7月にトルコで発生したクーデター未遂事件だ。これはエルドアン大統領に反発する軍関係者によるものだといわれたが、結局大統領を拘束できず、失敗に終わってしまった。とはいえ、これは現在のエルドアン政権の「イスラム化」への動きと、従来トルコが採ってきた「世俗化」との対立がその出発点だ。

トルコはこれまで、EU(欧州連合)への加盟を狙ってきた。トルコ自らも「われわれは欧州」という意識が強い。1923年にオスマン帝国が崩壊し、トルコ共和国が発足して以降、政治に宗教を介入させることなく、欧州をベンチマークにしながら産業化によって国家発展の道を探ってきた。

だが、欧州はトルコをそう見ていない。EU加盟交渉も遅々として進まない。そこでエルドアン政権は、かつてのオスマン帝国のように「イスラムで生きていく」ということを決心したのだろう。

エルドアン大統領はこれまで、トルコ建国以来の伝統的な世俗主義を骨抜きにするような政策を続けてきた。それは、欧州への反発もあり、トルコがトルコであるアイデンティティをイスラムに求めてきたということだ。「ネオ・オスマニズム」(新・汎オスマン主義)という言葉が最近出てきたが、エルドアン大統領はオスマン帝国のようにイスラム的価値に基づいて周辺諸国への影響力を強めようとしているのは明らかだ。

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