全体を底上げするか出る杭を早く伸ばすか

2000年前後の「商社冬の時代」には各社の新卒採用も大きく絞り込まれた。たとえば最大手である三菱商事の新卒採用人数は、ピークだった1991年の227人から、01年には103人まで大きく減少した。

各社バラツキはあるものの、これから経営人材としての働きが期待される00~05年入社組(4年制大学卒で現在33~38歳)は大きな谷間の世代になっている。人数が少ないだけに「できるだけ多くの社員に経営人材に成長してもらう必要が高まっている」(三菱商事人事部の杉村隆之部長代行)。

三菱商事では管理職の等級(バンド)はかつて八つあったが、現在は四つに集約し、優秀な社員は30代でも早期に抜擢できる制度に変えたほか、社員を海外事業会社に派遣する「グローバル研修生(トレーニー)制度」は、11年度から入社8年目までの全社員に対象を拡大した。

30代半ばでの「選別」が前倒しに

これまで三菱商事で「チームリーダー」や「マネージャー」などの課長級ポストに昇格するのは40代前半というのが一般的だった。入社から7~10年程度は自然に等級が上がるが、30代半ばになると同期との差が開き始める。ここでの選別がより前倒しされる傾向にある。

今年4月に就任した同社の垣内威彦新社長は、投資先の経営へこれまで以上に深く関与する「事業経営」を前面に打ち出す。「投資先へ派遣する経営人材はますます必要だ」(杉村氏)。そのためにも、できるだけ若いうちにいろいろな経験を積んでもらうことがカギとなっている。

(撮影:今井康一)

早期昇格組の一人である生活産業グループ・経営戦略ユニットの藤原裕之マネージャー(37)は、30代に入って大きくキャリアの方向性を変えた。藤原氏は入社してから食肉営業一筋で、国内を中心にキャリアを歩んできた。転機となったのは32歳から3年半の間、米国の食肉加工工場インディアナ・パッカーズに出向して初の海外駐在を体験したことだ。現地の従業員とのやり取りなど投資先の経営に悩んだ経験から、「一から体系的に経営学を学びたい」(藤原氏)という思いを強め、社内の留学制度を利用して米マサチューセッツ工科大学で1年コースのMBA(経営学修士)を修了。今年春に帰国し、生活産業グループCEOの側近として経営企画全体をサポートしている。

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