政治経験ゼロで不動産王から第45代米国大統領に駆け上がったドナルド・トランプ。写真はマンハッタンの不動産開発構想発表会見(1985年)(AP/アフロ)

政治経験や知性・気質面で明らかに大統領職への適性について勝っているヒラリー・クリントンが、支離滅裂な敵に無残に敗退した。今の米国には、「女性は何にでもなれる。大統領以外は!」という絶望感が漂っている。

これは、リベラルな男性にも連鎖反応を起こし、月刊誌『アトランティック・マンスリー』の名物ライターであるジェームズ・ファローズは、チンパンジーの雄がリーダーの地位を奪うために地団駄を踏み、地面をたたき、木の枝を引きずり、投石などの威嚇行動に出る例をトランプの狂態とダブらせた。動物界では、雄しかリーダーになれないのである。

一方、クリントン側はガラスの破片を模した紙吹雪を用意していたから、敗北は一層無残である(むろん、最後の「ガラスの天井」である大統領職の獲得を祝うはずだったのだ)。

他方、2016年の大統領選は、米国が理念よりも動物的サバイバルに腐心せざるをえない段階に劣化した現状を如実に証明している。今回の投票パターンを見ていこう。

好例は、トランプ支持層の中核を担った「高卒白人男性」である。出口調査によると、彼らからの得票率はトランプ67%、クリントン28%。皮肉にも08年の民主党予備選では、クリントンがこの階層の得票でオバマを凌駕していた。彼らの大半は前民主党員であり、しかもトランプの空手形である「海外へ逃げた製造業を国内へ引き戻す」を真に受けてはいないにもかかわらず彼に投票した。現在のグローバルな分業体制がそんなに生易しいものではないことは彼らとて知り尽くしているのだ。

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