【今週の眼】苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授
かりや・たけひこ●1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

全国の小、中、高校教職員5001人を対象に、連合総合生活開発研究所が行った「教職員の働き方と労働時間の実態に関する調査」の結果が発表された。ここでもあらためて日本人の働きすぎの実態が示された。勤務日の平均労働時間を算出すると、小学校教員で11時間6分、中学校教員では11時間43分になる。週の労働時間でも60時間以上が小学校72.9%、中学校86.9%と、大多数が法定労働時間の40時間を超える。週当たりの担当授業時間数の平均が小学校で19時間、中学校で15時間だから60時間の3分の1にも満たない。授業準備の時間もあるが、ほとんどは授業とは関係しない仕事で超過時間が埋められている。特に中学校では、部活動の指導が負担の重い仕事となっている。

このような教員の超過勤務の実態は、働き方の問題に終わらない。教育の質に直接関係し、やがては日本の人材育成の良否につながる。特に現在進められている教育改革は、教員の負担がさらに増える内容となっている。2020年度から実施される学習指導要領では、小学校で英語活動が3年生から始まり、5、6年生では英語は教科となる。英語の教員免許を持たない教員がそのほとんどを担う。さらにはアクティブラーニング(体験学習やグループワークなどの活動を通した能動学習)と呼ばれる教授(学習)法が提唱されている。こうした新機軸が満載のうえに、教科の内容を減らしすぎて批判を浴びた「ゆとり教育」の轍(てつ)を踏まないよう、ほかの教科の内容や時間数はほとんど削られない。

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