【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

働き方改革の実現は、いま最も重要視されている政策課題の一つだ。とりわけ長時間労働の削減と同一労働同一賃金に大きな関心が寄せられている。前者については、大手広告代理店での過労自殺があったことが、早急な対応を促しているように思われる。安倍晋三首相が直接指揮を執っている働き方改革実現会議の議論が注目される。

実現会議の議論以外で最近注目されつつあるのが転勤の問題だ。企業は従業員に対して人事異動を命ずることができる。その中には勤務地を変える配置転換も含まれている。配置転換は、企業にとって人材の育成や最適な人材配分に必要な措置だ。しかし、転居を伴う転勤は命ぜられた本人のみならず、その家族の生活にも不利益をもたらすことが少なくない。まず、本人にとっては配転先でのストレスに加えて、新しい地域に順応する必要がある。単身赴任の場合には、家族から離れて暮らす寂しさにも慣れねばならない。

家族同伴で転居するケースでは、家族に負担のかかることが多い。就学期の子どもは転校せざるをえなくなる。家族が仕事を持っている場合には、その仕事をどうするかという問題も生じる。たとえば、妻が就業していたとすると、夫の転勤についていくために、それまで勤務してきた会社を辞めざるをえなくなるかもしれない。仮に転居先で新しく仕事を見つけることができなければ、夫の転勤は妻の就業にマイナスの影響を与えることになる。それは、大きな人的資源のロスとなりかねない。

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