銀行が取るべき責任を私一人が背負わされた

住友銀行青葉台支店長だった私は、支店の顧客だった地主さんをこう誘った。「土地をこのまま放置していては一銭にもならないでしょう。でも、土地を担保に融資を受け、『小谷』という大物が持っている株に投資すれば、あなたも儲かる可能性がありますよ」。

バブル末期の1990年7月。仕手集団の光進を率いる小谷光浩氏が東京地検特捜部に逮捕された。藤田観光の株価を吊り上げ巨額の売却益を得たことが証券取引法違反(相場操縦)とされた。山下彰則氏が地主に紹介した「小谷」その人である。同年1月に青葉台支店長から大塚支店長に転じていた山下氏も支店長室の家宅捜索を受ける。そして10月、小谷氏への顧客紹介が出資法違反とされ、東京地検に逮捕された。

元住友銀行支店長 山下彰則 やました・あきのり●1945年生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、住友銀行に入行。88年1月、青葉台支店長に着任。大塚支店支店長を最後に90年7月依願退職(その後懲戒解雇扱いに)。現在は不動産会社を経営。(撮影:梅谷秀司)

88年に赴任した青葉台支店(横浜市青葉区)の営業エリアには、広大な土地を持つ地主さんが多くいた。東急田園都市線の開通後に新興住宅地となり地価が上昇したことで、土地を有効活用したいとのニーズが地主さんたちの間に強くあった。

投資の誘いに賛同した地主さんを小谷に引き合わせ、小谷が保有している株を買ってもらった。市場を通さない両者間での売買だ。株は儲かるタイミングを計って市場で売ってもいいし、小谷に買い戻させてもいい。買い戻しの念書は私が書かせた。購入資金は銀行とノンバンクが融資した。そのノンバンクは私が斡旋した。資金運用をしたい地主さんと資金ニーズのある小谷をマッチングすることで、銀行に収益が入る。「これは商売になる」と思った。

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