滋賀県にあるタカタの研究開発・生産拠点。周辺を多数の取引先が取り囲む

「大規模な破綻のはずが、なぜこれほど落ち着いていたのか」

エアバッグの異常破裂に伴う大規模リコールで経営破綻したタカタ。東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請した4日後の6月30日、主要拠点を構える創業の地、滋賀県で債権者説明会を行った。出席した部品メーカー担当者は冒頭の発言を残し、驚いた様子で会場を後にした。

滋賀に先駆けて行われた東京での説明会には300人以上が集まり、金融機関を中心に20人近くから質問が相次いだ。一方の滋賀では、出席者数は同程度だったが質問者は5人のみ。1時間半を予定していた説明会は30分早く終了した。

安定供給が絶対だった

通常、民事再生手続きに入ると、申請日以降の債権は従来の方法で全額支払われる一方、申請以前の債権は法律上、支払いが禁止される。申請以前の債権は再生計画の中で支払金額が決まり、債権カットの対象になる場合が多い。

実は滋賀の説明会が終始穏やかだった背景には、民事再生手続き上の異例の措置がある。タカタの取引先には、再生法申請以前の債権が滞りなく全額支払われる特例的な企業があるのだ。

裁判所への提出資料によると、一般債権者767社のうち、タカタの事業継続に不可欠な564社が例外措置の対象だ。この中には滋賀の取引先も多く含まれる。帝国データバンクによれば、タカタグループの1次下請け企業141社のうち、都道府県別では滋賀が30社と最多だ。

これは民事再生法85条に基づいた措置。タカタの再建に携わる長島・大野・常松法律事務所の鐘ヶ江洋祐弁護士は、「弁済がないとタカタの事業継続に支障を来す一部債権者には、例外的に支払いを継続できる」と説明する。

本件の特殊性は、例外措置の対象を部品の安定供給にかかわるか否かで選別したことにある。例外措置を受ける企業は、シートベルト部品やエアバッグ部品などを扱う部品メーカーが大半だ。

完成車メーカーは部品ごとにその品質を認証して採用する。破綻を受け、下請けメーカーがタカタとの取引をやめれば、調達先の変更を迫られる。だが代替部品の認証にも平均で6カ月もの期間を要する。完成車メーカーの長期生産停止を避けるためにも、この例外措置が必要だった。

またタカタ自身の生産継続に不可欠な人材派遣会社や専門性を有するコンサルティング会社なども対象となった。

6月30日の説明会当日は、ちょうど月末の支払日だった。例外措置対象の部品メーカーの担当者は、「弁護士からの説明どおり、(通常なら破綻後には支払われない)売掛金の入金を今朝、確認できた」と安堵の表情を見せた。また同日の朝、同じく対象となった県内の別の企業に話を聞くと、「入金が確認できたので、今日の説明会には出席しない。新しい情報は特にないだろう」という淡々とした反応だった。

一部債権者から不満も

スカイマークや第一中央汽船など従来の民事再生手続きの事例では、100万円以下の少額債権者などに限って全額弁済する措置がとられた。

このため、「タカタのケースは線引きの部分にあいまいさが残る」(帝国データバンク情報部の内藤修・副課長)との指摘もある。実際、部品メーカーでも例外措置の対象とならなかった企業がある。対象外となった企業の担当者が説明会後、「でたらめな対応だ」と不満を漏らす場面もあった。

とはいえ、例外措置を使えず事業継続が困難となれば、再生スポンサーに選定された米自動車部品メーカー、キー・セイフティー・システムズへの事業譲渡も滞る。そうなると譲渡金がタカタに入らないため、結果、弁済率が下がり不利益を被るのは例外措置対象外の債権者となる。

「経済合理性を考えれば、例外措置を受けない企業もこの方法に反対しづらい」(前出の内藤氏)

タカタは銀行や完成車メーカーから支援を受けるため、足元の資金繰りに懸念はない。問題はこの先だ。

債権者は8月25日までに最終的な債権額を届け出る。完成車メーカーが求償するリコール費用は1兆円を超えそうだ。大半はカットされるものの、債権額を決めるということは、タカタと完成車メーカーの間でリコール問題の責任範囲を明確にすることと同義だ。この点で両者が争う事態もありうる。次のヤマ場がすぐそこに迫っている。

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