【今週の眼】柳川範之 東京大学大学院教授
やながわ・のりゆき●1963年生まれ。慶応義塾大学通信教育課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学助教授などを経て2011年から現職。主著に『法と企業行動の経済分析』『独学という道もある』など。(撮影:今井康一)

あえてとても大ざっぱにいえば、今の日本に必要な課題は、いかに働かないで稼げるようにするかなのだろう。過重労働が問題とされている今、労働時間をもっと減らして、より生産性を上げ、収益性を高めることが求められている。これは働く時間を減らして、より稼げるようにする取り組みにほかならない。

また、少子高齢化が進み、労働人口が減少していく中で、国全体の成長率を高めていくことも必要とされている。これも、働く人が減っていく中でより付加価値を上げるようにしなければならないという意味で、働かないで稼ぐ方向性だ。

さらにいえば、ベーシックインカムの議論もこの点と関係している。一定のベーシックインカムが誰でも得られる社会を国全体として目指すとすれば、働く人は少なくてもベーシックインカムを配るだけの稼ぎが国全体になければ難しい。

まったく働かなくても、あるいはほとんど働かなくても大金が入ってくる不労所得の生活。誰しも夢見るものかもしれないが、世の中そんなに甘くはない、というのが現実だろう。しかし、その道を探らなければならないとすれば、いかに少ない労働で稼ぎを増やすかの工夫を真剣に考えるべきだ。

たとえば、石油産出国のように、優れた天然資源を持っていれば、それは比較的容易なことかもしれない。天然資源を高値で売り続けられれば、多くの人が必死で働かなくても稼ぐことが可能だろう。

しかし、天然資源のない国はどうすればよいのか。ポイントはやはり、資産や資源を活用することにある。そして、活用できる資産や資源を作り出すことにある。

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