学生運動に明け暮れ、母校をバリケード封鎖して逮捕され、退学となった後、アニメの世界に入り『ガンダム』の生みの親の一人に。海外でも著名な漫画家・アニメーターの安彦良和氏がその人生を自叙伝にまとめた。

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──激動の経歴です。

逮捕歴のある学生運動家は、当時ゴマンといた。普通の就職活動はできず、サブカルチャーの世界に逃げた人も少なくはない。自分もそんな珍しくない一人だった。

革命は起こせると思っていた。資本主義に対し、世界的な規模で若者が異を唱えている。僕らも少数派ではない、と。しかし母校を封鎖したところで何も変わらなかった。退学処分を受け、失意の中で何か稼ぐ手段を探していたら、アニメスタジオの「養成所員募集」の広告が目に入った。中学・高校時代には漫画家を目指していたから、高校時代に描いた大学ノート2冊分の漫画を持参して、採用試験を受けたら通っちゃった。1970年の秋だった。

正義の戦争はない。人はどこまでも人

──夢を追ってではなく、食いつなぐためにですか。

漫画家としてやっていくのは際立った才能がいるから難しい。でもアニメーターなら何十人も集まって1作品を作る。これなら自分でも食いぶちぐらい稼げるのではないかという考えだった。

よく働いたよ。夏休みと正月を除けばずっと仕事。もしアニメ業界に夢を持って入っていたら、幻滅していたかもしれない。でも何の期待もしていなかった分、僕は強かった。仕事ならば、きついのは当然だ、と割り切れた。

しだいに自分を評価してくれる人も増えた。すると色塗りとか原画だけでなく、絵コンテとか演出とか、作品全体にかかわる仕事に携われるようになった。この業界はステップアップすると、より面白い仕事に手が届く仕組みになっている。この仕事も捨てたものじゃないなと思えてきてね。僕の人生を変えたガンダムの企画にも、そうした中で出合った。

ガンダムで画期的だったのは、「正義の戦争」がないという世界観だった。悪の秘密結社が襲ってきて正義の味方が守る、というのが当時のお約束。だが、ガンダムは敵も味方もない、善と悪もない、戦争をただ戦争として描く。

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