買い物客や訪日観光客でにぎわう銀座。中央通りから一歩内側に入ると、「建設用途 ホテル」との掲示のある工事現場があちこちに目立つ。

内外の高級ブランド店が軒を連ね、日本を代表する商業地の銀座に今、ホテル進出が相次いでいる。

大手不動産デベロッパーの森トラストは7月12日、銀座2丁目に開業するホテルを発表した。高級ライフスタイルホテル「エディション」を2020年春〜夏に、銀座と虎ノ門で同時に開業する。運営は米マリオット・インターナショナルに委託する。

「銀座の名声を上げる」

ライフスタイルホテルとは、日本でデザイナーズホテルやブティックホテルと呼ばれる分野。従来のホテルが設備の豪華さに照準を合わせているのに対し、デザイナーの感覚を生かすなど、より流行を重視したものとなっている。

大手チェーンでは米スターウッドホテル&リゾートの「W」、国内に展開しているブランドでは米ハイアット ホテルズ コーポレーションの「アンダーズ東京」がある。

マリオットはザ・リッツ・カールトンのような高級さとライフスタイルホテルという二つの特徴を兼ね備えたブランドとして、13年に英ロンドンにエディションを開業。現在は世界に4ホテルを展開し、今後13軒の開業を予定している。

エディションは、マリオット系としては最上級のブランドに位置づけられる。「最上級ブランドに見合う、最高水準の客室単価を期待している」(マリオットのアンソニー・カプア執行副社長)。価格は明らかにされていないが、1室1泊8〜10万円という水準もありえそうだ。

「銀座には富裕層が買い物をするような高級ブランド店はあるのに、泊まりたくなるホテルはない。こうしたホテルが銀座の名声を上げる」(森トラストの伊達美和子社長)

小ぶりでも高単価

銀座3丁目の外堀通り沿いでは、読売新聞東京本社の所有地に19年春、無印良品が世界最大の旗艦店の出店に合わせ、建物上層部に「MUJI HOTEL」の開業を予定する。

同ホテルは良品計画がホテルのコンセプトや内装デザインを監修、家具やアメニティグッズは店舗で販売しているものをそろえる。設計や運営は小田急電鉄系のUDSが担う。良品計画は年内にも中国でのホテル開業を計画しているが、日本では銀座が初だ。

朝日新聞社が1888年に取得し、長く東京本社を置いていた銀座6丁目には、18年初頭に「ハイアット セントリック 銀座 東京」の開業を予定する。

そのほか、東京五輪前の開業を目指し、鉄道系や不動産デベロッパー、ホテル運営専門業者が入り乱れて開発を計画している。

ホテル開発に詳しいCBREの吉山直樹シニアディレクターは、「銀座エリアのホテル客室数は16年末の約3900室から、20年には5割増える」と予想する。

ホテル開発の波は周辺にも波及している。有楽町で不動産デベロッパーのヒューリックが18年秋にザ・ゲートホテルを、築地では19年1月に観光バスで知られるはとバスが周辺で3軒目となるホテルの開業を計画している。

これまで国内では急増する訪日観光客の受け皿として宿泊特化型のビジネスホテルの増加や、民泊関連法案の整備が進められてきた。ただ今回、銀座に顔をそろえるのは、滞在そのものを楽しめるようなユニークなものや、従来に比べ価格帯の高いブランドが多い。

銀座8丁目の旧日航ホテル銀座の跡地には今年10月に三井不動産系列が運営する「ホテル ザ セレスティン銀座」の開業が決まっている。

三井不動産はすでに銀座で「三井ガーデンホテル銀座プレミア」と「ミレニアム 三井ガーデンホテル 東京」の2軒を運営している。今回は三井ガーデンホテルより上級のブランド「ザ セレスティン」を開発した。今年9月以降、京都祇園、銀座、芝(港区)と立て続けに開業する。銀座では既存ホテルに比べて客室単価が2万円近く高く、3万〜3.5万円を見込む。

同社でホテル事業を担当する入山惇一主事は「銀座の喧噪から一歩離れ、落ち着いた雰囲気。食事やサービスの質を高めた、滞在を楽しめるようなホテルになる」と意気込む。

ホテル業界にとって銀座は建築規制が厳しいうえに、不動産の取得競争が激しく、大きな土地を確保しにくい。そのため車寄せや宴会場がなく、レストランも少なくし、100〜200室程度と小ぶりにせざるをえない。その一方で新ブランドを投入し客室単価を高めるとともに、低層階には小売店などテナントを誘致することで収益を確保する。

ただ、このまま物件価格と建築費の高騰が続けば、さらに客室単価を上げざるをえない。思惑どおりに顧客を集められるか。

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