ヒアリが発見された大井埠頭。国は発見地点の周辺2kmの範囲で確認調査を行っている

「ヒアリが確認された日は電話が鳴りっぱなしでした」。7月10日、内陸部でヒアリが発見された愛知県春日井市の環境保全課職員はそう振り返る。

6月9日、兵庫県尼崎市のコンテナ内で初めて発見されたヒアリ。発見地域は東京、愛知、大分など10地域に及ぶ(7月27日時点)。

ヒアリは南米原産のアリで、刺されるとやけどのような激しい痛みが生じる。毒性が強く、アレルギー反応によって死に至ることもある。

実は降雨量なども考慮すると、本州南西域や四国、九州はヒアリの生息に好適な条件を備えている。北海道大学の東正剛名誉教授は、「日本への侵入は時間の問題だと思っていた。むしろ遅かったぐらい」と語る。

米国はあきらめムード

ヒアリが注目されるのは、被害額の大きさもある。人体への影響のほか、農業被害、さらに温かい電気設備の内部にアリ塚を築くなどの被害もある。米国では2006年時点の被害額が年60億ドル(約6600億円)といわれ、その額はむしろ拡大傾向にある。九州大学・決断科学センターの村上貴弘准教授は、「米国ではヒアリに対してあきらめムードが支配している」と指摘する。

米国では1930年代に南米からヒアリが侵入し、50~60年代に一度目の根絶対策が実施された。だが大量に農薬をまいた結果、他の生物にまで影響が及び、対策は中止に。70年代にも二度目の根絶対策に乗り出したが、このときはベイト(毒餌)トラップに入っていた薬に発がん性作用が見つかり、失敗に終わった。

その後ヒアリの天敵である寄生バエを使うも、実際の寄生率は低く、相当数放たないと根絶は困難であることが判明。テクノロジーが発達した今日も、万能な対策は見つかっていない。村上准教授は、「現在は農業被害への対処もすべて個人負担で、ヒアリ対策に熱意が感じられない」と話す。

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