週刊東洋経済 2017年8/5号
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「日本銀行のマイナス金利政策がわれわれのビジネスモデルを破壊しつつある。いつまでやるつもりなのか」。ある地方銀行のトップは怒りをあらわにする。7月20日、日銀は物価上昇率2%の達成時期を「2019年度ごろ」と1年先送りすることを表明した。つまり、マイナス金利政策はまだまだ続くわけだ。

預金金利はほぼゼロで下げ余地がない一方、金融緩和による市場金利の低下や競争激化で、貸出金利が下がり続けている。銀行収益の柱である資金利益(貸出利息や有価証券利息から経費を除いたもの)も減っていく。貸し出しに回らず余った預金は国債で運用するのが常だったが、金利がゼロ近傍になりそれもできなくなった。

口だけの金融機関は淘汰されていく

本業の利益悪化を補うため、株や債券の売却で利益を維持する地銀が少なくない。日銀は4月に公表した「金融システムレポート」でこの動向を取り上げ、「有価証券の益出しで(収益を)補い続けていくことには限界がある」と指摘した。地銀も、含み益という蓄えに限りがあるのは百も承知だろう。「八方ふさがり」。そんな声が業界から聞かれる。

国内銀行ベースで貸出残高は増えているものの、地銀だけで見ると不動産向けが大半だ。金融庁関係者は「足元で増えているアパートローンには永続性がない」と切って捨てる。森信親長官自身は15年の就任以来、繰り返し地銀の変革を求めてきた。昨年の金融行政方針では、「横並びで単純な量的拡大競争に集中するような銀行のビジネスモデルは限界に近づいている」と警鐘を鳴らしてもいる。

資金利益の低下を受けて、銀行は金融商品の販売で手数料収入を稼ごうと必死だ。すると森長官は今年4月の講演で「顧客の利益を顧みない、生産者の論理が横行している」と資産運用業務のあり方を厳しく批判。顧客本位の運営を徹底するよう強く求めた。さらには、「顧客本位を口で言うだけで具体的な行動につなげられない金融機関が、淘汰されていく市場メカニズムが有効に働くような環境を作っていく」とも語った。これは銀行・証券会社などすべての金融機関に向けられた警告である。

森長官の続投が決まり、金融機関はこれまで以上に長官の一挙手一投足に神経をとがらすことになるだろう。インタビューで森長官の真意に迫った。

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