神社本庁、靖国神社の幹部を歴任した人物が7月に出版した靖国批判本が波紋を広げている(撮影:田所千代美)

数日前、書店に並んだばかりのある著書が靖国神社、神道界に波紋を広げている。

書名は『靖国神社が消える日』。波紋の種は書名の過激さではなく、著者の経歴とその内容のほうである。著者の宮澤佳廣氏は神職の出身で、神社本庁教化、渉外両部長、神社新報編集長、神道政治連盟事務局長を経てこの6月まで靖国神社の禰宜(ねぎ)として宣徳、総務両部長を務めた国学院大学講師。神社本庁、靖国神社の幹部を歴任した人物なのだ。

現在も長野県安曇野市で神職を務めており、靖国神社の国家護持論者でもあるが、著書の中で、1978年の松平永芳宮司による東条英機元首相らA級戦犯合祀について合祀自体は是認しているものの、その動機と手続きの面から批判しているのだ。さらに現在の西南戦争で死亡した西郷隆盛らを祭るべきという賊軍合祀論に対する徳川康久宮司の対応にも疑義を呈している。

発売前の7月19日に共同通信が、宮澤氏が松平宮司を批判する新著を出版すると配信し、全国地方紙に掲載されたため、靖国神社には発売前から問い合わせが来ていたという。靖国神社関係者は心穏やかではないだろう。

特に8月15日の終戦記念日を前に、議論を呼ぶ可能性が高いのはA級戦犯合祀のあり方に対する批判だ。太平洋戦争後の連合国による極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判で起訴され、絞首刑となり、その後合祀された東条氏らA級戦犯をめぐっては元日本遺族会会長で元自民党幹事長でもある古賀誠氏が、「合祀前の『宮司預かり』の状態に戻すべき」と主張、日本遺族会内部で議論するよう求めている。

理由の一つ目は、松平宮司が日本遺族会に相談どころか連絡もなく、ひそかに行ったこと、二つ目が、当時の指導者にはあの無謀な戦争を遂行し、250万人という人的犠牲を出し、日本を焦土とし、国家滅亡の危機を招いた責任があり、兵士と一緒に祭ることには無理があるということだ。

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