10月19日、満90歳の誕生日を前に、褒美を二つもらった。一つは福島県いわき市の市民大学「いわきヒューマンカレッジ」学長就任20年の区切りを迎えたこと(今後もまだ務め続ける)。もう一つは日本メンズファッション協会の「第15回グッドエイジャー賞」の受賞者に選ばれたこと。共に“起承転々”(結はない)を信条として、さらに生き続けようと踏ん張っている私には、強く背中を押してもらえる励ましになった。

いわき市のほうでは、副賞として地元の銘酒のラベルにしてくれた。私の笑い顔を漫画風にデザインして、講演のときに必ず言う「どーもすいません」(ペンネームに引っ掛けたシャレ)を酒の名前にしている。「うまい酒ですな」。式後のパーティで、同じテーブルの地元名士にそう告げられた。まんざらお世辞でもないらしい。酒のラベルになったのは初めてではないが、今回はひときわうれしい。

グッドエイジャー賞は私一人ではなく、ほかに4人おられる。歌手の岩崎宏美さん、俳優の高橋英樹さん、プロレスラーの蝶野正洋さん、生活の木代表取締役の重永忠さんだ。賞の選考基準は、(1)時代に左右されない主張ある生き方をしている人、(2)いい年を取る生き方を先駆的に実践している人、(3)時代性と話題性に富んだ人、(4)魅力ある人間性を備えた人、などだ。

四つのうち(3)と(4)には私は当てはまらない。幾つになっても自分の年などは意識したことはないから、(1)に多少引っ掛かったかも。俺のまねはするなよ、ろくな目に遭わないぞ、と若い人に告げているから。“いい年を取る”暮らしには程遠い。

ただ、何を生きがいにしているのかと問われれば、黒澤明監督の映画『生きる』に出てくる、小田切みきさん演じるアルバイトのお茶くみ役の信条だとは言える。市役所職員にお茶を入れる彼女は、「私が入れたお茶を飲んだ職員が、本当に市民のために働いてくれたら、こんなうれしいことはない」と思っている。が、職員がその期待に応えないから、町工場に転職する。ウサギの人形を作る。ある日路上で出くわした元職場の市役所課長に、自作のウサギの人形を見せてこう言う。「ウサギ1羽作るたびに、私は日本のどこかの赤ちゃんと仲良しになるの」。前に書いたかもしれないが、私はこの信条が働くことの原点であり、またそうでなければいけないと思っている。

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