政労使合意を断念した連合の神津里季生会長(左)と、修正を主導した逢見直人事務局長(撮影:今井康一)

今秋の臨時国会で、いよいよ「残業代ゼロ法案」が審議されることになりそうだ。

政府は一定の年収以上の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」と、「働き方改革」の柱である残業時間の上限規制を一本化した労働基準法の改正案を、臨時国会に提出する方針だ。

すでに政府は高プロや裁量労働制の拡大などを盛り込んだ改正法案を、2015年4月に国会に提出済み。ただ、野党や日本労働組合総連合会(連合)から「残業代ゼロ法」「過労死促進法」と批判され、いまだ審議に至っていない。

8月末から開かれた、厚生労働省の労働政策審議会の分科会では、労働側委員はそろって高プロを批判し、残業時間の上限規制との一本化反対を主張した。だが、労使双方の主張を受けた末、荒木尚志分科会長(東京大学教授)は一本化が適当だと結論づけた。

こうした結論に至った背景には、ほかならぬ連合が高プロの審議を前提に、その内容の修正を求めていたという経緯がある。7月、連合の神津里季生会長は安倍晋三首相と会談し、高プロ対象者の健康確保措置を強める修正を要請している。首相も応じ、政府、経団連と同月内にも「政労使合意」を結ぶ手はずだった。

だが加盟組織からは「一貫して反対運動をしてきたのに信頼を失う」などと異論が続出。結局、執行部は組織内をまとめきれず、政労使合意は見送られた。官邸幹部は、「政府も経団連も連合の要請を受けて動いたのにこの結果。いかがなものかと思う」と話す。

政労使合意の呪縛

負い目に加え、連合執行部にはようやく築いた政労使合意というチャネルを失いたくない事情がある。

第2次安倍政権は当初、政府の産業競争力会議や規制改革会議で雇用規制を「岩盤」扱いするなど緩和一辺倒。連合など労働者側は完全に排除されていた。

だが、15年の一億総活躍国民会議の発足時から風向きが変わり始める。働き方改革では政労使合意の枠組みで、残業時間の上限規制、同一労働同一賃金など労働者寄りの政策が打ち出された。「逢見直人事務局長が修正要請を主導したのは、政労使合意の枠組みを守ろうとしたため」(連合幹部)とされる。

政府は取り込みの一方で、揺さぶりもかける。7月末、労政審の新部会「労働政策基本部会」が開催された。塩崎恭久厚労相(当時)の肝いりで発足しており、「旧来型の労使の枠組みにとらわれず、有識者が個人として自由闊達に意見を言う場」と説明している。

実際、会議では従来の労働政策の枠組みを抜本的に変えるべきとの主張が相次いだ。連合はらち外に置かれかねない。

内憂外患を抱える連合。「労働者の代表」として、正念場を迎えている。

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