野生の花に覆われた骨髄の料理。骨髄はその場で、のこぎりでカットされて供される

変態は食の世界では褒め言葉である。世界中から変態が集まるレストランがあるらしい。

そんな話を聞いて目指した店は遠かった。ノルウェーの首都オスロから飛行機で1時間。フィヨルドで知られるトロンハイムの空港から車を飛ばして2時間。赤茶色の民家が点在する山道を抜け、スウェーデンに入ると空が広くなった。高山植物の花が咲き乱れる夏のスキーリゾートを過ぎ、未舗装道の行き止まりの湖畔にその店「フェーヴィケン」はあった。

「世界のベストレストラン50」で34位(2013年)のこの店には、夏に2回訪れている。とりわけ初回の13年6月は強烈な印象を残した。酪農学校の納屋を改装した店は、窓が小さく外の景色が見えず、武骨なテーブルにクロスはない。だが、すきのないインテリアとライティングに期待が高まる。

その日の客は6組12名。英国、カナダ、米国……、世界中からおいしいものだけを目指し、この辺鄙(へんぴ)な所にある店を訪れるだけあり、みなレストラン事情に詳しい。テーブルをシェアしたカナダ人に東京から来たと言った途端、「すきやばし次郎のボヤは大丈夫なのか?」と変態的なジャブをかまされた。

前菜をつまみつつレストラン談義をしていると、当時29歳のシェフ、マグヌス・ニルソンがトレードマークの長髪をなびかせてさっそうと登場した。1日十数人の客全員に同じコース料理を、19時に提供し始める。これは料理をベストな状態で提供するだけでなく、客同士の一体感を高める効果がある。

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