週刊東洋経済 2017年9/23号
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「ネットで服は売れない」という常識を覆し、成長を続けるスタートトゥデイ。サービス開始から4年足らずで月間流通総額100億円超の個人間通販(C to C)市場を作り出した メルカリ。ネット通販という新大陸は拡大し続ける。

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イラスト:平戸三平

旧大陸から新大陸へ。いま流通業界で新旧交代のゲームチェンジが起きている。

新大陸の主役は、フリーマーケット(フリマ)アプリの「メルカリ」と、スタートトゥデイが運営するファッションEC(ネット通販)の「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」だ。両者は店舗から足が遠のいた消費者の心理をつかみ、利用者が急増している。百貨店をはじめ、既存の大手小売店が軒並み苦戦しているのとは対照的だ。

ゾゾ時価総額は1兆円超 三越伊勢丹の2倍以上

上場企業のスタートトゥデイは株式市場でも注目の的だ。今年8月、同社の時価総額は1兆円を突破した。百貨店首位の三越伊勢丹ホールディングスは約4600億円だから、すでに2倍以上の差をつけている。これまで国内のアパレル業種で時価総額が1兆円を超えていたのは、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだけ(約3.3兆円)だった。小売業全体でも時価総額が兆円単位の企業はセブン&アイ・ホールディングスやイオンなど数社しかない。

業績の伸びも著しい。2016年度の商品取扱高は前期比約3割増の2120億円を記録した。ゾゾタウンの出店ブランドは6000、年間利用者は700万人に迫る。アパレルの一大集積地として圧倒的な集客力を誇っており、「服はネットでは売れない」という常識は過去のものとなった。

アパレル関連の市場全体は、消費者の低価格志向が強まり競争が激化しているが、EC化率は右肩上がりだ。服の半分はゾゾタウンで買うという20代の女性は、「最近はネット上で商品のイメージが正確に把握できる。靴以外はリアル店舗で試着せずネットで買うことが増えた」と話す。都内で働く30代の女性は「セールのときを中心に、服の7割はゾゾで買っている。リアル店舗で実際に買い物をするのは『ユニクロ』と『靴下屋』くらい」と言うほどだ。

低価格化の流れやEC拡大の影響をもろに受けているのが百貨店だ。百貨店の衣料品売り上げは10年前に比べて3割以上減少した。最盛期に売り上げの4割を占めた衣料品の低迷は百貨店不振に直結する。スタートトゥデイの栁澤孝旨副社長兼CFO(最高財務責任者)も「強いて言えば、ライバルは百貨店」と明言している(インタビュー『スタートトゥデイのナンバー2が語る)』。

大手百貨店はどこも、都心部の大型店の稼ぎ頭であった婦人衣料が低迷し、地方店の不振を補いきれなくなっている。日本百貨店協会の統計によると、17年7月まで衣料品が21カ月連続で前年同期の水準を割り込んでおり、回復の糸口はまるで見えない。

同じ“旧大陸”のショッピングセンター(SC)では、中核テナントとなる女性向けファッション店舗の退店が目立つ。ネット上で好きな服がいつでも選べるようになったことで、「ゾゾタウンを使い始めたら、『今日は洋服を買おう!』と思ってリアル店舗に行くことがなくなった」「リアル店舗に行くと、当然ネットよりも置いてある商品が少ないので、不完全燃焼で帰ることもある」(共に20代女性)という声は少なくない。

スタートトゥデイのEC事業本部担当の武藤貴宣取締役は「ほかがやっていないときにECを始めたので、先行者メリットは大きい。年数を重ねることでシステムや物流面でもパワーアップしてきた」と自信を見せる(インタビュー『キーマン4人に聞く』)。今年に入り、一段の成長を見据えて、ゾゾタウンは物流拠点の大幅な拡張に動いている。ネットで服を買うことが当たり前になった今、ゾゾタウンが切り開くファッションECの新大陸はまだまだ大きくなるだろう。

一方、上場間近とされるメルカリは個人間取引(C to C)の新市場を切り開く。フリマアプリを出したのは13年。配送や決済などで大手企業と連携してサービスの利便性を高め、積極的な広告宣伝で知名度を一気に向上させた。その結果、競合を出し抜いて日本のフリマアプリ市場でトップを走る。

すでに3000億円市場 フリマアプリの爆発力

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