先日、かなり有名な大企業の管理職18名が参加する研修を請け負った。私が依頼されたのは、2泊3日の研修の1日を使って、自分の感情をコントロールする能力を相対評価して順位をつけてほしいというものだった。

1日程度のお付き合いで、その人数全員の順位づけは不可能だ。私は代わりに、能力評価を「高い」「標準」「低い」グループに分けること、また、論理的に物事を考える、それを説明する、相手の説明を理解できる、という能力も併せて評価することを提案した。

研修では、能力評価の前夜に、簡単な地図の読み方を講義し、道ではない山中の移動ルートが記載されている地図を配付した。そして、リーダー役が時間によって交代することや、飲料水は3人で1本のPETボトルを共有しなければならない点などを伝えた。

移動ルートはよほどの経験者でなければミスをするように設定した。飲料水も、3人での譲り合いが途中から奪い合いになるような量にした。参加者の普段の平均的な運動量は、カートを使用してのゴルフ程度である。毎日の大半を冷暖房完備の環境で過ごしている。そんな身体では、2時間もしたら苦しくてあごが上がり、遠くをぼんやり見るような目つきになってくる山歩きである。

何を評価されているのかを察知しているからであろう。管理職の方々は当初、互いに過剰なほど丁寧な気遣いをしていたが、徐々にそれができなくなった。肉体的な余裕がなくなると、精神的にもつらくなり、自分を飾る余裕がなくなるからだ。私の思惑どおりに参加者は追い詰められ、それぞれの本性を現し始めた。

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