40年以上ぶりに小田急線ロマンスカーに乗った。子どもの頃、ロマンスカーといえば、運転席が2階にあり、先頭車が展望台になっているあこがれの列車だった。

今回乗ったのは、本厚木にある日本アクアラングというダイビング製品を作っている会社へ行くためである。私はそこのデモンストレーション・ダイバーを務めており、特殊潜水器の細部構造とオーバーホールの手順に関する研修を受けに行くためだった。会社に到着すると、簡単な講義のあと、実際に分解、洗浄、結合を行った。

驚いたのは、私に特殊潜水具の分解、結合の指導を行ったのが、同社の社長であったことである。指導中の社長は、それまで私が知っていた彼とはまったくの別人で、顔つきから物腰から口調まで、すべてがザ・職人なのだった。

まず、社長は特殊潜水器の分解を始めた。工具類は使う順番に右から整然と並べられており、右端のドライバーを手にした瞬間、一流の道具使いであるとわかった。

銃であろうと刃物であろうと一流の道具使いは、道具の重心が微妙に変化する様子を感じながら使用する。だから、手や指の圧力センサーが微妙な重力変化を感じ取れるように、その道具を自分の手の中で泳がすように持つ。

社長は、ドライバーの重心をとらえながら手の中で転がすと、その先端をネジの頭部に当てた。金属と金属が触れたにもかかわらずまったく音はしなかった。

次に、ドライバーの底部に手のひらを当て、上から強く圧力をかけながらゆっくりと回した。きっちり締まっていたネジが「ピシッ!」という音とともに緩むと、一気に圧力が解放された。ドライバーの底部に右手人さし指の先端だけを添え、左手の親指と中指、薬指をドライバーの軸に当てて高速回転させ、素早くネジを抜き取った。

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