【今週の眼】苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授
かりや・たけひこ●1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

総選挙は自民党の圧勝となった。NHKの出口調査によれば、自民党は新しく選挙権を得た18、19歳をはじめ、20代、30代の若者たちから高い支持を得た。40、50代のそれが30%台前半にとどまったのに対し、20代の半数が自民党に投票した。リベラル新党と見なされた立憲民主党への投票率が若者層では40、50代の半分に満たず、若者層のリベラル離れ、保守化傾向が指摘されている。

総選挙の後、オックスフォード大学の同僚たちと、客員として滞在中の米国人の日本史研究者を交えて昼食を取る機会があった。その前日に、トランプ大統領が人種差別的な発言をして米国のメディアがそれを批判していることが話題となり、その流れで、英国のEU離脱とトランプの支持者は誰なのかに話が及んだ。私がそこに反知性主義的傾向があるのかと尋ねると、英国人の同僚が、大卒か非大卒かが大きな分断線だと答えた。なるほど、統計によればトランプ支持者もEU離脱支持者も、非大卒者に多い。しかもその分断線は年齢層とも重なり、若者のほうが非支持者は多くなる。

もう一つ興味深い知識に触れた。同僚の英国人社会学者の研究によれば、英国における政治的な態度や考え方において、主要な分断線は意外にも階級よりも学歴差にある。高学歴者ほどリベラル支持者が多く、その傾向は時代を通して安定しているというのだ。ここでも学歴が社会の分断線として重要な役割を果たしている。

英米の傾向を背景に置いたとき、日本の若者層の半数近くが自民党支持という結果をどのように考えたらよいのか。「世代間格差」という言葉が示すように、日本では世代や年齢層が社会の分断をもたらすといわれる。そこに学歴というもう一つの分断線を重ねると、日本の特徴がさらに浮かび上がってくる。

英米でも日本でも、若年層に高学歴者が多い。社会の高学歴化が進んだからだ。そして英米では学歴が高くなるほどリベラル支持が増えるといわれる。教育による一種の啓蒙効果だ。他方、日本では、若者層のリベラル離れが進んでいるように、そのような学歴効果は見られない。

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