佐々木 融 JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
ささき・とおる●2015年6月から現職。03年4月からJPモルガン・チェース銀行でFXストラテジストとして金融市場を調査・分析。その前は日本銀行に勤務、調査統計局などを経て、国際局(当時)為替課で為替市場介入を担当、ニューヨークで米国金融市場分析も担当した。(撮影:今 祥雄)

FRB(米国連邦準備制度理事会)のイエレン議長の後任は、パウエル理事という無難な人選に終わった。来年にFOMC(米国連邦公開市場委員会)で投票権を持つ地区連邦準備銀行総裁の顔ぶれは今年よりもタカ派が増える。ただ、イエレン氏がFRBを離れ、さらに、伝えられているようにニューヨーク連銀のダドリー総裁まで来年退任するなら、本来12名の投票メンバーが7名になってしまう。議長の任期が終了する来年2月になっても副議長などのポストが決まっていなければ、イエレン氏は、理事としての任期を残しているため、しばらく残留することもありうる。

政策金利であるFF金利の先物は現状、FOMCでの今年12月の利上げをほぼ完全に織り込み、来年は1回強の利上げを織り込んでいる。一方、JPモルガン・チェースのエコノミストは、12月に加え、来年4回の利上げを予想している。この予想が当たれば、現状2.32%前後の米国長期金利は大きく上昇し、ドルも上がると考える市場参加者が多いかもしれない。

しかし、筆者はFRBの利上げがドル円相場に与える影響は小さくなっていくと考えている。なぜなら、今後FRBが利上げを行っても米国の長期金利はさほど上昇しないと考えているからだ。

たとえば、FRBの前回利上げ局面である2004年6月〜06年6月の2年間を見てみよう。利上げ開始直前のFF金利誘導目標は1.0%で、長期金利(米国10年国債金利)は4.7%だった。しかし、その後FF金利誘導目標が3.5%ポイント分引き上げられ、4.5%になるまで、長期金利が4.7%を超えることはなかった。つまり、FF金利誘導目標が、利上げ開始時点の長期金利の水準近くに到達するまで、長期金利は利上げ開始時点の水準を上回らなかったのだ。

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