分裂と統合の日本政治 - 統治機構改革と政党システムの変容
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すなはら・ようすけ●神戸大学法学部教授。1978年生まれ。東京大学教養学部卒業後、同大学院総合文化研究科修士課程修了。博士(学術)。大阪市立大学、大阪大学を経て、2016年4月から現職。著書に『地方政府の民主主義』『大阪──大都市は国家を超えるか』など。

2党制の定着を困難にする首長の権限強化

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

1990年代の選挙制度改革で構想されたのは、2大政党制の実現だった。民主党政権誕生で実現されたかに見えたが、わずか3年で政権は瓦解。今回の総選挙では、流れを汲む民進党が大分裂し、2大政党制の実現が遠のいたと考える人も少なくない。民主党政権の失敗はガバナンスの欠如によるというのが定説だが、原因は本当にそれだけか。

本書は、気鋭の政治学者が2党制実現を阻むもう一つの要因を明らかにしたものだ。国政レベルでは選挙制度改革が進む一方、地方分権改革で知事や市長など首長の権限が強化されたことが、地方議会における野党の統合を阻害し、2党制定着を困難にしたという。国政に進出した首長政党に民進党がのみ込まれたのも、本書の仮説を裏付ける。

かつての中選挙区制の下での自民党。国会議員が地方議員を系列化し、補助事業などの誘導と引き換えに集票活動を行い、国会議員同士の競争を通じて、国政と地方政治の統合を可能としていた。しかし、小選挙区制導入で、自民党内の競争が消滅、補助事業の縮小もあって、国会議員と地方議員の関係は希薄化した。

間隙を縫って存在感を増したのが地方分権改革で権限を得た知事や市長である。国政レベルでは自民党に対抗する勢力は民主党に集約されたが、地方議会では首長が地方議員を組織化する動きが広がった。

地方議会の選挙制度は以前のままで、都市部では大選挙区制の下、民主党は国政のように政党名で支持を集めることが難しく、農村部では定数は少なかったが自民党支持が圧倒的で、民主党の勝利は困難だった。政令指定都市は小選挙区制に近い選挙制度で民主党が議席を増やすが、そこでは首長党が誕生、首長支持か不支持かを有権者に迫り勢力を強め、民主党は埋没した。

これが、政権を獲得しても地方政治で民主党が一向に基盤を固められなかった理由だ。

安定した政党システムの樹立という視点に立てば、地方分権改革を再検討する必要があると主張する。まず、国政と非対称な地方議会の選挙制度の見直しは不可欠で、小選挙区制が望ましいが、実務的に困難なら、せめて比例代表制を導入すべきという。

失速気味だが、今後も首長政党が国政のかく乱要因となり、憲法改正などでキャスティングボートを握る可能性もある。我々は2党制実現と地方分権改革の齟齬を見落としていた。多くの人が望ましいと考えていた地方分権改革に一石を投じる貴重な一冊だ。

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