店頭ではフルーツの生絞りのジュースを販売(撮影:尾形文繁)

10月下旬、東京駅の丸の内地下街を歩いていると、色とりどりのフルーツを並べた店が目に入った。店内には、野菜や生ハム、チーズ、パスタなども陳列されている。

奥に入ると、中央にサンドイッチやピザなどを作る厨房が配置され、100席以上のレストランスペースもある。約450平方メートルの店内は、さながら“食のテーマパーク”といった雰囲気だ。

「EATALY(イータリー)」という看板を掲げたこの店舗は、8月末に東京駅構内の商業施設グランスタ丸の内にオープンした。店内は何もかもイタリア尽くし。ワインは常時150種類をそろえ、オリーブオイルなどは、絞りたての商品が出れば随時入れ替える。

実は今、この店を視察に訪れる小売り関係者が絶えない。ある食品スーパーの幹部は「これまで総菜など中食を強化してきたが、売り上げは頭打ち。ネット販売との差別化のためにも、“食のテーマパーク”というコンセプトは参考になる」と語る。

イータリーは2007年にイタリア・トリノで誕生した。現在、米国やブラジルなど世界12カ国で38店舗を運営、17年度の売上高は5億ユーロ(約655億円)を計画する。

日本では15年、三井物産などと合弁会社を設立し、現時点で日本橋三越店と今回出店したグランスタ丸の内店の2店を運営している。

ピザは生地から作り上げる(撮影:尾形文繁)

「食べる、買う、学ぶ」

イータリーの特徴は食に関するさまざまな体験を提供する点にある。たとえば、イータリーのレストランでパスタを食べて気に入れば、帰りがけに同じパスタやトマト缶を購入することができる。従業員から調理の助言をもらうことも可能だ。

食品スーパーとレストランの融合について、イータリー・アジア・パシフィックの甕(もたい)浩人社長は「地元生産者が作る食材を購入し、食事をするという点では、日本でいえば『道の駅』に近いコンセプト」と述べる。

イータリーには「高品質な食材を作る生産者こそが主役」という考え方がある。丸の内店でもイタリアの2000以上の小規模生産者から集めた現地食材を扱う。ほかに、イータリーが契約した東京近郊の若手農家が生産するイタリアの野菜も展開する。

さらに「学ぶ」機会もある。週1~2回のペースでセミナーを実施。ワインやピザなど、その日ごとのテーマを設定し、イタリアの生産者を招いた試食会などを開催している。「食に関するさまざまな発見があるのが、イータリーの一番の魅力」(甕社長)。

課題は出店スピードだ。イータリーでは専門的な食材を扱うだけに、人材育成が不可欠となる。それだけに「矢継ぎ早に出店するのは難しい」(甕社長)。出店場所も人が多く集まる一等立地が基本だ。今後は20年の東京五輪の開催前までに、東京都心で1000平方メートル程度の旗艦店を出すことを目標に掲げる。 

成熟市場の日本において、潜在需要を掘り起こすためには、イータリーのような新しい食の提案がスタンダードになる時代が来るかもしれない。

プラス会員(有料)にお申し込みいただくと
下記のサービスがご利用いただけます。
  • 『週刊東洋経済』のすべての記事がWebで読み放題
  • 『週刊東洋経済』が毎号届く
  • 『会社四季報 業界地図』のコンテンツが閲覧できる

    ※一部のコンテンツは無料会員記事でも閲覧が可能です。

  • 東洋経済主催セミナー無料ご招待
プラスの視点 アクセスランキング バックナンバー一覧 TOP