「イスラム国」の動きをつかむにはシリア情勢、特にアサド政権の基盤となる「アラウィ派」を知ることだ(ロイター/アフロ)

池上彰氏の第二の特徴は、思考が普遍的であることだ。池上氏のコメントで、「日本人だからどうしてもこういう考えになるのは仕方がありませんね」とか「アラブ諸国だから日本人の感覚は通じませんね」といった、民族や文化、宗教などの特殊性に還元して、説明をごまかすことがない。「なぜそうなるのか」という理屈を徹底的に追究し、客観的な事実と論理で攻めていく。

2015年の国際情勢でカギを握るのはシリアとイラクの一部地域を実効支配している「イスラム国」の動静だ。1月にフランスのパリで発生した連続テロも、世界的規模でのイスラム革命を実現しようとする「イスラム国」が出現しなければ起きなかったであろう。この「イスラム国」が誕生した原因を理解するためには、シリア情勢の分析が不可欠だ。分析のカギとなるのが、アサド政権の基盤となるアラウィ派という特殊な宗派だ。14年の時点で、日本のメディアの解説のほとんどは、アラウィ派をイスラム教シーア派と見なしていた。しかし、池上氏は、アラウィ派の特殊性について認識し、それを普通の読者に理解可能な言葉で説明した。一例を引いておく。

〈シリアも、もともとはバッシャール・アル=アサド政権の独裁に反対する民主化運動だったはずが、周辺国の思惑や反政府勢力が内部対立することで複雑化してしまったのです。

シリアは、イスラム教シーア派の分派であるアラウィ派のアサド一族が、国民の70%を占めるスンニ派の住民を押さえつけている構図でした。〉(池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題5』KADOKAWA、14年、101ページ)

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