幅広い産業の賃金低迷を嫌気して米国の株価が下降トレンドを続けている。筆者は1月9日に発表された雇用統計での米国全業種の賃上げ状況の弱さを受けて、サンフランシスコ連邦準備銀行のシニアエコノミストに、状況を確認した。

彼のチームは、リーマン危機後に賃下げをせずに従業員を守った多くの産業が、その分、景気好転局面になっても賃金を抑えていると分析。その内容をイエレンFRB(米国連邦準備制度理事会)議長がジャクソンホールでの講演で紹介して、話題となった。

今回のヒアリングで、米国の多くの産業では依然として賃上げのトレンドが固まっていないことがわかった。

米国では、医療、小売り、レジャーの3業種による雇用が雇用全体の59%を占める。景気回復が始まる直前の2012年第4四半期~14年第4四半期の累計で、全米平均の実質賃金の上昇率を上回ったのは、3業種のうちレジャーだけだという。

この間、実質賃金の上昇率は、小売りが累積マイナス0.3%、医療がプラス0.3%にとどまっている。自動車・機械(全雇用の9%を占める)、情報通信(同3%)はマイナス圏に沈んでいる。上昇率が全米平均を上回る業種は、金融(同9%)、運輸・公益(同5%)、レジャー(同17%)で、合計は31%。国民の多くがコンスタントに消費を拡大できる状況ではなさそうだ。

過去に米国が利上げに踏み切った時点に見られたような全産業に共通する賃上げトレンドは、まったく確認できない。

サンフランシスコ連銀の分析では、現在の情勢は、雇用は増えたものの、新規雇用が生まれたセクターの多くで実質賃金上昇率が1.25%未満にとどまっており、直近6カ月では横ばいからむしろ下降ぎみになっているという。「これでは新規雇用の拡大によるGDP(国内総生産)押し上げ効果がほとんど期待できない」とのコメントが返ってきた。利上げの時期が大幅に先送りされる可能性を示唆している。

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