地元(東京都目黒区)の名誉区民に選ばれているので、成人式で講演を頼まれた。4月には企業や公共団体の新職員に話をするが、骨子はほとんど同じだ。

まず話すのは、“グローカリズム”の認識を持ってほしいということ。グローバルとローカルの合成語である。現代における主唱者は前大分県知事の平松守彦さんだ。

平松さんは現職時代「一村一品運動」を提唱し、カボス1個、シイタケ1本、車エビ1匹の養殖にしてもこの意識を持ってほしいと主張した。つまり、大分のことだけでなく国際的な課題にも関心を持ってほしいと希(こいねが)ったのだ。

歴史人でこの説を唱えたのは、幕末の思想家・佐久間象山(「しょうざん」と読んでいるが、生地の長野市では「ぞうざん」。生家の近くに「ぞうざん」と呼ばれる丘がある)だ。開国論者として殺されてしまうが、彼の思想の根は攘夷論である。

「外国(夷)を日本から逐(お)うには戦争を覚悟しなければならない。そのためにはまず開国し、相手国と交流してその実態を知る必要がある」と、いわば便宜的開国論を唱えた。優れた外国の科学知識や技術を導入することは必要だが、日本人のスピリットを失うな(和魂洋才)ということだ。門人の吉田松陰はこれを実行し、米国に密航しようとした。

次に若い人に告げるのは、「おかゆになるな。おにぎりの米粒になれ」ということだ。社会のあしき論理にクタクタに煮られて自分を失ったのがおかゆだ。おにぎりの米粒は握られていてもきちんと自己の存在を主張している。だからといって好き勝手なことをするわけではない。つねに属する家庭・組織に責任を持ってその座を占めるという帰属意識と責務感を持つということである。

このため3番目に「自分を高く評価し、謙虚に生きてほしい」と訴える。矛盾している。自分を高く評価するとは、自身の基本的人権を大切にし、想像力などの能力を自分で発掘し、育てていくという姿勢だ。が、掲げる理想や目的に能力が追いつかない。ハードルは高い。その差を埋めるには多くの人から学ばなければならない(謙虚)。

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