省庁の会議に出された提案としては極めて異例なことに、G型・L型大学の構想は幅広い議論を呼んでいる。提案者の冨山和彦氏に真意を聞いた。

とやま・かずひこ●東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)。元産業再生機構COO。みちのりホールディングス取締役、経済同友会副代表幹事。(撮影:今井康一)

──提案に対して賛否両論が渦を巻いています。

反論の中でいちばん多かったのは、「教員に実学を教えさせるのは、アカデミズムに対する冒涜(ぼうとく)だ」という大学教員の意見です。でも逆にこの意見こそが、実学の世界で生きていく市井の人たちに対する冒涜ですよ。

そもそもの問題は日本の大学教育が、平均的な学歴で社会に出ていく大多数の人たちにとって役に立たないという現実です。僕は地方のバス会社など中小企業を経営し、4000人を雇っているからわかる。中小企業で働く人の現実と、大学が教える内容はまったく合っていない。日本の大学教育は、丸の内にオフィスがある大企業で働くような偏差値的エリートだけを想定しています。

しかし日本経済は今や中小企業が主役です。大企業で働く人の比率は過去20年間減少し、今や10%台しかない。圧倒的多数の人は中小企業で働いているのです。そして中小企業は雇用の流動性が高いのが特徴です。かつてのように、いわゆる一般教養を大学で学んで会社に入り終身雇用で勤め上げるという人は、今の若い世代では極めて少数です。そして今後も増えません。

この前提で、どうしたら大多数の働く人の地位を安定させられるかを真剣に考えなければなりません。労働市場側では同一労働同一賃金を徹底し、最低賃金を引き上げることが必要です。労働監督も厳しくしたほうがいい。これらと同じように不可欠なのが、企業を超えて普遍的に有用な専門技能を学ぶ場です。労働市場の問題と同様、教育についても本音で議論しなくてはダメですよ。

プラスの視点 アクセスランキング バックナンバー一覧 TOP