本特集の「これが日本の格差だ」などで見ていくように、日本の所得格差は米国ほど拡大していない。しかしピケティはいくつかの重大な要因から日本の今後の格差拡大に危惧を抱いている。ピケティは2014年の本誌インタビューで、日本について実に多くの指摘をした。

──日本の将来の不平等について何が心配ですか。

ピケティ(以下ピ) 日本のケースは、私が『21世紀の資本』の中で言っていることを例証しているようでとても興味深い。戦後の極めて高い経済成長率と、現在の非常に低い成長率との差が際立つ。成長がゆっくりの国では、国民所得比で見た資本(富)の蓄積はより大きくなる。日本は欧州と同じように国民所得比で3倍から6~7倍へ拡大した。これは非常に高い水準だ。

──それだけ資本分配率が増え、労働分配率が減る可能性があるということですね。人口減少も富の集中が進む要因だと主張しています。

たとえば、夫婦に子どもが10人いるなら、相続はそれほど重要ではない。10人に分配するから1人当たりは少なくなる。だから子どもは自分で仕事をして、自分で富の蓄積をしなければならない。しかし、人口減少社会では低成長によって国民所得比での富の蓄積がどんどん進む。しかも、子どもが1人しかいない場合だと2人の両親から財産を継ぐが、双方の親に富がなければ、どちらからも財産を継承できない。このように世襲によって受け継がれる不平等もとても大きくなる。これは業績主義の理想に対するリスクだ。

──日本は政府債務残高がGDP(国内総生産)比200%を超え、先進国で最悪の財政状況です。

ただ、日本は公的資本(純資産)の減少分よりも、民間資本(純資産)の増加分がずっと大きい。確かに日本の国家のバランスシートは資産と負債がほぼ同量になるまで悪化したが、民間資本がそれ以上に増加している。これは、どちらかといえばよいニュースだ。日本は欧州と同じで、政府は貧しいが、民間資本によって国全体の資本はかつてないほど豊かになっている。

国民所得に比べて民間資本がこれほど大きい国で解決策は何になるだろうか。日本も欧州と同様に、資本への課税を増やすことを提言する。国民の大半にとって労働所得は停滞している。一方で不動産、資産の高度な資本化が進んでいる。労働所得に対して減税、資本に対して増税するのは自然な解決策だろう。これはバブルを防ぐことにも役立つ。

──反対に、すべきでないことは何ですか。

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