Q1  そもそもどんな本ですか

ピケティは税務当局が保有する統計データを活用して、所得の上位0.01~1%の富裕層が占める所得シェアや資本・所得内容などを細かく分析しました。3世紀にわたる20カ国以上のデータを収集し、富と所得の歴史的変動について研究した彼の集大成が『21世紀の資本』です。

20世紀初頭まで極めて大きかった所得や資本(富)の格差は、二度の世界大戦による資本の破壊と富裕層への課税強化により大きく圧縮されました。しかし1970年代以降、金融自由化や累進課税の緩和により再び先進国内の格差が増大してきています。この事実をピケティはさまざまな裏付けによって示しました。

格差を論じた経済学で、これまで有名だったのは50年代に発表された米経済学者サイモン・クズネッツの研究でした。

彼の研究手法はピケティも大いに参考にしているのですが、20世紀前半までの米国のデータしか扱っていません。そのため結論も「資本主義の発展とともに所得格差は自動的に縮小する」としていました。

ところがその後、先進国社会は大きく変容。まったく同じ手法でピケティが現在までを分析してみると案の定、70年代以降の格差は拡大していたのです。特にその傾向が著しい米国では、驚くなかれ、上位1%の所得シェアは約20%と、20年代の比率を超えているショッキングな結果が出ました。『21世紀の資本』が彼の母国フランスよりも米国で爆発的に売れた理由はここにあります。

本書では米欧日の主要国ごとに、上位層の所得シェアの変遷やその内容、さらに相続財産の影響度の推移などが詳細に書かれています。ジェイン・オースティンやバルザックの小説に登場する19世紀前半の富裕な不労所得生活者や、米国のスーパー経営者(超高額報酬を得る経営者)をデータで分析するなど、過去や現在の出来事を実証的に説明した歴史書として、多くの経済学者から高い評価を得ています。

本書が約700ページと大著なのは、資本の変遷についての経済理論、公的債務や税制の変化、20世紀の社会経済政策の影響についても幅広く論じているからです。富と所得の歴史的変動を考える際にはデータ、経済理論、政治・社会制度の変化を総合的に考える必要があるとピケティは説いています。

 Q2  結論とされる不等式「r>g」って何ですか

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