かつてアダム・スミスは市場を「見えざる手」と表現した。

その見えざる手のメカニズムを可視化して、優れた市場や、市場のアイデアを用いた制度の設計を試みるのが「マーケットデザイン」だ。近年、急速に研究が進む経済学の新しい分野である。

その効力を世界的に知らしめた成功事例に、各国で何千億、何兆円単位の収益を上げた周波数オークションがある。日常的に使われる電話やインターネット。それらの通信は情報のやり取りを特定の周波数帯の電波によって行っている。だが通信事業者がこうしたサービスを提供するためには、帯域の免許が必要だ。

この免許を販売するのが周波数オークションである。1990年にニュージーランドで、94年に米国で本格的に始まったのを契機に、世界各国が続いた。米国より先に周波数オークションを開催したニュージーランドでは、下手な市場設計をしたために収益が大幅に下がった。

一方、米国におけるオークション市場の設計には経済学の知識がフル活用された。主要メンバーの一人が、オークション理論の権威であるスタンフォード大学のポール・ミルグロム教授。数式だらけの論文を書く経済学者が紙と鉛筆を駆使して市場の設計図を描き、成功を収めた。現在までの累計収益は8兆円を超す。

「見えざる手」を可視化する理論

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