経済学の目的は、天下国家を論じることや、複雑な統計を分析することだけではない。「限られた時間やおカネをどう振り分けるか」を考えるという経済学のエッセンスは、日常生活の身近な場面で役立つ機会が多い。『40歳からの会社に頼らない働き方』など一般向けの著作も多い柳川範之・東京大学大学院教授が、誰でもできる経済学知識の身近な活用方法を伝授する。

やながわ・のりゆき●1963年生まれ。慶応義塾大学を通信教育で卒業後、東京大学大学院で博士号取得。現在、東京大学大学院経済学研究科教授。(撮影:今井康一)

質問1 何年経っても作家の芽が出ない。就職すべきか、続けるべきか

解答 過去に固執せず未来のベストな生き方を探すべき

  A 何か重要な決定をするときに、精神論や感情論を優先させてしまうことは日本人によくある傾向です。このケースでは「せっかくここまで頑張ってきたのだから、あきらめるのはもったいない」と過去を引きずってしまっているように思えます。

しかし、これは賢い考え方ではありません。現在、この人が直面しているのは「今後どうするべきか」という問題です。それはすでに作家活動に投じてしまって取り戻せない過去とは切り離して考えるべきなのです。

経済学には「サンクコスト(埋没費用)」という概念があります。すでに投じてしまい戻ってこないコストのことで、今後の選択についての費用便益を考える際には本来、考慮しても意味がないものです。

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