ブータンは国民総幸福量(GNH)世界一を目指す(ロイター/アフロ)

幸福とは何によって決まるのか。それは人類誕生以来の深遠な問題だ。

通説的な経済学では「幸福はカネで買える」と考えてきた。理由は単純で、より多くのおカネを持っていれば、より多くの望むものを手に入れることができるからだ。

GDP(国内総生産)の最大化こそが国民の幸福増進につながる、という理屈もそこから来ている。主観的な幸福度を聞くアンケートでも、「所得が多い人ほど幸福度が高い」結果となっており、実証面でも裏付けがとれていると思われてきた。

しかし最近、より詳細な研究が進むにつれて「幸福はカネで買える」説は、経済学者の間でも時代遅れになりつつある。

理由の一つは幸福度を国際比較したときに生じる矛盾だ。幸福度がおカネで決まるのであれば、当然、所得が高い国に住んでいる国民の幸福度は、所得の低い国の国民より高いはずだ。しかし、実際は、国の貧富はそれほど影響を持たず、特に豊かな国では幸福度が頭打ちになっていることがわかる。世界各国の1人当たりGDPと幸福度をグラフ化した図表1を見ても、これは確認できる。

[図表1]
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もう一つは幸福度の時系列比較だ。数十年の期間で幸福度と所得を調査すると、経済成長にかかわらず幸福度は向上しなかった。たとえば、図表2に記載したのは日本の例だ。1981年から日本の1人当たり実質GDPは約1.5倍になったが、幸福度は増加するどころかむしろ微減となっている。

[図表2]
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一つの地域・時点の調査では所得増加が幸福度上昇とリンクするが、国際比較・時系列比較をすると関係がなくなる。この矛盾は「幸福のパラドックス」と呼ばれている。

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