トマ・ピケティの『21世紀の資本』の人気が沸騰している。『週刊東洋経済』は2度も特集を組み、書店に行けば、解説本が並んでいる。人気の理由は何だろう。

税込み価格5940円、脚注を除いて608ページの大著である。読んでも読んでも先に進まない。13万部の売れ行きらしいが、99%の読者は読破できていないだろう。筆者も99%に属している。

ブームが本格化したのは今年に入ってから。邦訳本の出版元は、みすず書房だ。経済書では実績の少ない、小さな出版社の果敢な挑戦だった。

当初は、書店側も恐る恐るだったように見える。6刷、7刷、8刷と増刷するにつれ、ブームが加速した。出版不況で良書が減る中、かろうじてメディアの目に留まったのがピケティであり、メディアが集中することで波及効果が増殖されたのである。

よみがえる金融資本主義

ピケティは目が覚めるような新基軸を打ち出しているわけではない。歴史データによって、資本主義社会に格差が生じる必然性を示している。

驚くのは、ピケティらが各国の税務記録から100年以上にわたる巨大なデータベースを作り上げていることだ。

試しに、ピケティが協力者とともに作成した「The World Top Incomes Database」のサイトにアクセスしてみるといい。日本についても、所得上位者1%の富の占有率がどう推移したか、1886年からのデータが簡単にダウンロードできる。

さまざまな研究者がピケティに異議を唱えているが、ピケティの「r>g(資本収益率は経済成長率=所得の伸びを上回る)」に対する自信は揺るがない。「これはデータに基づいた事実である」というのがピケティの反論だ。

たとえば、日本の研究者から「日本の格差は高齢化が原因であり、資本収益率の問題ではない」という批判が聞こえてくる。だが、格差=高齢化説は、ある国の狭い時期に限定された仮説だろう。

巨大なデータベースに基づき、各国共通の“普遍的な法則”を探ろうとするピケティの前で、手垢のついた日本特殊論はいかにも迫力不足だ。

だが、巨大なデータに基づく論考はピケティの専売特許ではない。ラインハートとロゴフの共著『This Time is Different』(邦題『国家は破綻する』2011年)も注目を集めたが、ブームにはならなかった。決定的な違いは、ピケティが既存体制への挑戦者であることだ。資本主義に対する挑戦者が途絶えて久しい。そこにピケティが現れ、共感を呼んだのである。

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