会見の熱狂から一転、宴はひそやかに始まった。

台湾・鴻海精密工業とシャープは4月2日、大阪府堺市にある両社合弁の液晶工場で、鴻海による買収契約に調印した。その場所から程近いホテルで、記者会見の数時間後に行われたこの宴は、髙橋興三社長らシャープの経営幹部や金融機関関係者らに対し鴻海が労をねぎらい、謝意を伝えるのが目的だった。

宴のスピーチで 舞台の幕は上がった

関係者の宴に姿を現した(撮影:ヒラオカスタジオ)

ホスト、すなわち鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は、会見に続く金融・産業アナリストや台湾メディアとの質疑応答に追われ、予定を2時間以上過ぎて現れた。

4月2日夜、ホテルで開かれた宴。郭氏(右)は髙橋社長(左)の続投を明言した(撮影:ヒラオカスタジオ)
(撮影:ヒラオカスタジオ)

駆け付け何杯も乾杯した後、舞台に上がってマイクを握った郭氏。そこから歌舞伎のつらね(荒事の長ぜりふ)のように、約10分にわたり朗々とあいさつを述べた。

「私はこのところずっと、自分自身に問いかけています。鴻海という歴史わずか42年の企業が、シャープから学ぶべきことは何なのか、と。思うに最も大事なことは、鴻海がいかにしてシャープのような100年企業になるか、ではありません。それよりも重要なのは共に戦い、シャープをさらに脈々と続く企業にすることです。シャープの次の100年に乾杯!

過去数カ月間にわたり、われわれはお互い異なる立場にありました。考え方が違うがゆえに、争うことすらありました。それは仕方がなかった。ビジネス・イズ・ビジネスなのだから。

しかし今日この日から、われわれは家族です。あなたの問題、私の問題というものはもはや存在しない。これから起こるすべては、われわれの問題なのです。シャープが成功して初めて、鴻海も成功したといえる。シャープが成功しなければ、鴻海の成功もありえない!

シャープの皆さん、今後はもう二度と資金の問題を心配する必要はありません。受注も、顧客からの信頼も、すべてもう心配しなくてよいのです。私は必ず、創業者の早川徳次の精神を引き継ぎ、そしてさらに大きく育んでみせます。私たちは、私たちは……もう家族なのです。

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