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感染症の薬をつくるシオノギ(塩野義)製薬 二つの物質を化学反応させ変化させる実験をした中野さん(右)と桐井さん。薬をつくるには何万種類もの化合物をつくります。

転載元
朝日小学生新聞
2017年(平成29年)6月5日(月)

指令感染症をなくすことは
できる?

今回は感染症の薬をつくるシオノギ(塩野義)製薬を取材しました。
こども編集長
桐井祥大さん
桐井祥大(きりいしょうた)さん
奈良県・小学4年生
中野麻菜さん
中野麻菜(なかのまな)さん
兵庫県・小学5年生

10年以上かけてでも
治す薬を開発

痛みや感染症などに効く薬を主にあつかう塩野義製薬。桐井さんと中野さんは、研究者らが薬づくりをするシオノギ医薬研究センター(大阪府豊中市)を訪ねました。白衣を着て、ゴーグルをつけた2人。研究者になった気持ちで、薬づくりの基本を体験しました。

まずは顕微鏡で、インフルエンザウイルスに感染した細胞を観察。研究者の大本真也さんは「目に見えないくらい小さいウイルスが人の体の細胞に入り、どんどん増えていく」と説明します。インフルエンザウイルスの大きさは、0.1マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリの1千分の1)といわれます。中野さんは「直接は見えないものを見て、薬づくりに生かしているんだ」。

酵素にうまく結びつく物質が薬になります

ウイルス増やさない鍵

ウイルスに効く薬はどんなつくりをしているのか、分子模型で確認しました。ウイルスは、自身の持つ酵素という物質を使って増えます。そこで薬は、複雑な形をした酵素の一部にぴたりとはまりこむことで、働きをじゃましてウイルスが増えるのを防ぐのです。「まるで酵素は鍵穴、薬は鍵のようです」と、研究者の服部一成さん。防ぎたいウイルスの酵素に合う「鍵」をつくるために、コンピューターで計算して薬となる化合物を設計していきます。

計算で見つけた化合物は、さまざまな薬品を反応させてつくります。2人は、研究者の長井正彦さんに教わりながら、薬品を反応させる実験をしました。酢酸(お酢)と炭酸水素ナトリウム(重曹)をまぜると、泡が発生するとともに酢酸が変化し、お酢のツンとしたにおいがなくなりました。反応により物質が変化することを利用して、薬はつくられるのです。

塩野義製薬・医薬研究本部長の塩田武司さんに未来の薬について取材しました

薬づくりは、基礎研究に2~3年、人工的に育てた培養細胞などで効果や安全性を研究するのに3~5年、人で効果を確かめる「治験」に3~7年……と、10年以上かかります。医薬研究本部長の塩田武司さんは「一つの薬をつくるのに、3万個の新しい化合物をつくって試験します。1千億円かけても一つつくれるかどうか。時間もお金もかかるのです」と説明します。

桐井さんは「悪い菌やウイルスをなくせますか」と質問。塩田さんは「それはとても難しいです。ただ、感染症にかかった患者さんを1日も早く薬で治すことをめざして、開発を続けていきます」。未来に向け、どんな薬をつくりたいのでしょう。「副作用がない薬や、エイズウイルス(HIV)の患者さんを完全に治せる薬など、さまざまな可能性を試しています。また、認知症を治せる薬など、高齢社会を元気に生きる手助けもしていければ」と塩田さんは話します。

(構成・中塚慧、今井尚)

分子の模型を使って薬の設計を体験する二人

Q 薬によって、飲む回数がちがうのはなぜ?

飲んでも早めにおしっこなどとともに体外に出る薬の場合は、1日複数回飲みます。でも、理想は「1日1回」ですむ薬です。


取材をしてみて

薬をつくる人の苦労を知ることができました。これからは、つくった人の気持ちを思いうかべながら、薬を飲みたいです。

病気を治す薬は、とても大切なもの。実験などをして薬がどうやってできるかがわかり、今までより薬の大事さを感じました。

山川記者の目世界に通用する新薬を作る

塩野義製薬の本社がある大阪市中央区の道修町は江戸時代から薬の町として知られ、武田薬品工業、田辺三菱製薬など日本を代表する製薬会社が本社を置いています。塩野義は和漢薬(中国や日本で開発された生薬)の問屋からスタートし、西洋の薬の開発に乗り出しました。

新しい薬を開発する「創薬」という仕事は製薬会社の根幹です。

日本では医療費が増えるのをおさえるために薬の価格が定期的に見直されます。新薬の特許が切れた後は、効き目が同じで価格が安いジェネリック(後発)医薬品が使われるようになり、製薬会社は利益を確保するために世界で通用する新薬をつくる必要があります。このため、世界中で会社を買ったり買われたりの再編が活発化しています。

塩野義もHIVの薬を世界で販売し、収入がのびています。ノバルティスやロシュ(どちらも本拠地はスイス)といった世界の巨大製薬会社に対抗しながら、未来の薬を開発し続けています。

『週刊東洋経済』副編集長 山川清弘

塩野義製薬株式会社
〒541-0045
大阪市中央区道修町3丁目1番8号
TEL:06-6202-2161
HP:http://www.shionogi.co.jp/

50周年記念企画 「未来を見に行こう」

子ども向け全国紙、朝日小学生新聞の創刊50周年記念企画。「最新の事象がコンパクトにわかりやすくまとまっている」と、経営者やビジネスマンの間でも密かに支持されている『朝小』と「週刊東洋経済プラス」が「未来を見に行こう:現場編」としてコラボレーション。未来の技術をテーマに、子ども記者と『週刊東洋経済』副編集長 山川清弘の異色タッグが企業に共同取材します。『朝小』紙面で月1回程度連載、『プラス』でも転載記事が公開されます。

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医薬品

医療費抑制が逆風、創薬力がカギを握る

新薬開発の成功確率は約3万分の1と難易度は年々上昇している。がんや認知症のような難易度が高い領域や、患者数が少ない薬の開発に傾注することになり、必然的に研究開発費が膨らんでいる。その一方で、製薬会社は医療費抑制の逆風に晒されている。国は安価な後発薬への切り替えを促進しており、製薬会社を支えてきた特許切れ薬の収益貢献も細っている。世界的に活発な再編が続く。

「週刊東洋経済」の歴史から

上場直前、躍進企業だった塩野義製薬

昭和23年(1948年1月1日号)

塩野義製薬の初登場は1948年1月1日号。「増資公開迫る塩野義製薬」として、特集「有望会社の選択」の中で片倉工業や味の素と並んで紹介されている。当時は未上場会社だが(株式公開は49年)、借入金返済のため増資を計画している。創立が明治11年(1878年)で、株式会社への改組が1919年6月。初代塩野義三郎氏の個人経営が発祥で、製薬会社としては新興企業。だが武田(薬品工業)や田邉(現田辺三菱製薬)を追い上げ、売り上げでは武田を猛追している。「舊公價」「新公價」とあるのは旧公定価格と新公定価格。現在の薬価改定では引き下げが当たり前だが、当時は公定価格が倍に引き上げられているのも時代を感じさせる。

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