7月28日深夜、北朝鮮は同月2回目となる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行した。折しもその数時間前には、かねてより国防分野への理解不足も指摘されていた稲田朋美防衛相が「日報問題」で辞任。東アジア情勢の緊迫感が増しているさなか、与党・自民党は内閣改造、野党第一党の民進党は代表選と、互いに腰が据わらない。

『週刊東洋経済』2017年5月13日号では、与野党の安全保障分野の政策通として知られる2人の政治家に、自衛隊が北朝鮮などの脅威にどう対処するかを聞いている。あらためて読み返してみたい。

 

“加憲”で憲法に自衛隊を明記すべき

INTERVIEW|民進党(元外相) 前原誠司

まえはら・せいじ●1962年生まれ。京大法卒、松下政経塾、京都府議を経て、93年に衆議院議員に初当選、当選8回。外相など歴任。(撮影:梅谷秀司)

──北朝鮮を取り巻く情勢が緊迫しています。

北朝鮮に関しては、これまでと比較できないほど緊迫度を増している。ミサイルについては弾頭の軽量化、長距離化、精度の向上、液体燃料に加え固体燃料の開発と、その開発速度が上がっている。核についてもプルトニウムからウランによる製造に移るなど、非常に憂慮すべき事態だ。

──そのような状況に対し、自衛隊の役割をどう見ていますか。

自衛隊は米軍とは盾と矛の関係にある。今後、情勢の変化によって役割分担をどうすべきかといった議論をすることは大切だ。冷戦時代は旧ソ連を念頭に自衛隊は存在していた。ソ連の侵攻を水際で食い止め、その間に米軍が打撃するといった役割分担だった。ソ連は崩壊し、今では北朝鮮からミサイルが飛んでくるなど、戦略環境が一変してしまった。盾と矛の関係見直しに関する議論は必要だろう。

──見直しへの議論は具体的にどうなりますか。

二つの観点が必要だろう。まずは、北朝鮮が持つ反撃能力の見極めだ。1994年の第1次核危機の際、当時の米クリントン政権は、90日間の戦闘で100万人の犠牲者が出ると想定した。在韓・在日米軍の約8割が犠牲になると見積もった。

北朝鮮の能力が当時よりさらに高まっている中で、どの程度の犠牲を想定すればよいのか、慎重な見極めが必要だろう。次に、94年当時と大きく違うのは、中国の軍事力もさらに増大しているという点だ。また、中朝関係は今でも「血の同盟」であり、有事の際に中国、ひいてはロシアがどう出てくるのか。この点もしっかり考える必要があるだろう。

──先制攻撃論が国会議員の間でも取りざたされています。

先制攻撃を行う際には、弾道ミサイルと巡航ミサイル、航空機による攻撃という三つの類型がある。しかし、いずれを保有・運用するにせよ高価になり防衛費負担増につながってしまう。時間も10年仕事になるだろう。イージス艦による防衛システムにしても、イージス艦6隻(将来的には2隻増)体制で100%対処するのは難しい。飛来するミサイルが多弾頭のものであれば、それを察知・認識して対処できるか。以上を踏まえると、先制攻撃の是非について見直しのための議論はあってもよいが、時間がかかるだろう。また、これには米軍の協力も不可欠だ。

──敵地攻撃もできるようにすべき、との意見があります。

敵地攻撃については、私は否定的なスタンスではない。だが、それを万能なものとして国民に示すのには疑問を持つ。敵地攻撃能力は北朝鮮だけに向けられたものではないと中国は反応するだろう。その場合、日本に勝ち目はあるのか。敵地攻撃能力もすべてを日本が持てるわけではない。

──自衛隊と憲法との関係はどう考えますか。

私は改憲ではなく“加憲”を主張してきた。9条第3項、あるいは10条といった形で、自衛隊の存在を明記してはどうかと考えている。

 

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